2005-01-01から1年間の記事一覧

食卓に咲いた花

「空腹だ空腹だ。」好物だけ食べて嫌いな物は皿の端に。それでも彼女は空腹を訴え続ける。僕は自分の皿から彼女の好物を分け与えて、その分の空腹を満たす為に食卓に飾られた花を口に入れた。食卓から花が消えて彼女の笑顔が咲いた。

近道

僕が迷路を歩いているとどこからともなく声がする「近道ならこっちにあるよ」それは小人だった頃の僕手を引かれてついて行けばそれは10センチほど開いた穴「今の僕にはもう通れないよ」そう言うと僕はまた歩き出した 僕が迷路を歩いているとどこからともな…

靴紐

時に走って時に立ち止まりつつ ここまで何とか歩いてきた 怪我をして歩けなくなった事もあったけれど 自分なりに、立派に歩いてきたつもりだ さぁ!どれほど進んだだろう そう思って振り返ってみたけれど それは以前見た時と少しも変わらぬ景色だった 唇を噛…

向かい風

鳥が空を飛ぶのに必要なのは背中を押す追い風なんかじゃなくて目的地から吹きつける向かい風向かい風を乗り越え続けて鳥は舞い上がり前へと進む どこまでも吹けよ向かい風僕は空を飛んでやるんだ

きっと世界なんてそんなもの

リングを幾ら辿ったとしてもリングの端は見つかりやしないしかしリングを傍から見ればリングという一つの固体でしかなくて始まりも終わりも見えてしまう

もう高笑いは聞こえない

子供の頃にテレビで見た悪役は自らを悪と名乗っていた世間的に、社会的に見て悪だと判っていながらそれでも己の信念の為戦っていたそれは『世の為人の為』と正義を掲げて戦うよりもきっと辛い戦いだったのだ今では放送にも規制が掛かり彼らが信念を掲げて戦…

アナログ時計は一週回るごとに時をリセットしてくれる訳じゃないから

アナログ時計が時を刻む刻む時は秒、分、時間誰もが知ってる役立つ時計 私はアナログ時計が欲しい日、月、年をもゆっくり刻むミリ秒をも止め処なく刻む時の概念を認識させてくれるような使い様のない役立たずの時計

新雪

新雪に足跡をつけて遊んだ事はないか?降り積もった雪がとても美しいものだとして子供の頃、何故かあんなにも汚したがって大人になっても汚す事に疑問を持つ事もなくそれでも貴方は美しいものが好きだと言うのか?新雪を踏みつけても誰も貴方を責めたりしな…

ある物書きの葛藤

『おい、お前』「何だ?」『お前物書きなんだろ?』「ああ、一応な」『恋愛の話、犯罪の話、親子の話、未来の話、戦争の話、病気の話、道徳の話・・・随分色々と書いたな』「ああ、書いた」『もう書くんじゃねぇよ』「何故だ?」『軽率なんだよ、お前自身は…

小さな親切小さなお世話

昼過ぎの電車に腰の曲がったばあさんが乗り込んできた私が声をかけるよりも先に金髪にピアスの兄ちゃんが立ち上がる「ばあさん!ここ!」ばあさんは遠慮していたようだったが兄ちゃんは黙ってドアの横にもたれかかったばあさんはぺこっと頭を下げ空いた席に…

狼と魚

あるところに仲の良い狼と魚がいましたある日、狼が海の近くを通りかかると羨ましそうに陸を見つめる魚が見えました海の中で生きる魚を可哀相に思った狼は魚を陸に引っ張り上げてあげました魚は急いで海に戻りこう言い放ちます「余計な事をして迷惑をかけな…

あなたと合わせて

人と人はお互いを知り合おうとすると掌を合わせたり胸を合わせたり唇を合わせたり身体を合わせたりするのだけれどひとつだけ、触れなくても合わせられる場所があるそれを合わせないと信用されないしやましい事があると合わせられなくなる誰かがあなたの事を…

大人

子供の頃、周りの大人たちに正しい事、いけない事色々教えられたから大人は完璧なんだと思っていただけどそうじゃなくて我侭な大人もいて、要領の悪い大人もいてだからこんな僕でも大人になれてしまった『・・・大人ってなんだろう?』僕は大人なのに分から…

昼間に輝く星の様に

沢山の人々に埋れて 君の笑顔は目立たないけれど見ようと思って目を向ければ昼間に輝く星の様に やさしい光を放っている

砂の降る街

この街が薄暗いのは 降りしきる砂が太陽を遮るから 空は冷たく大地は乾いたその街にも 毎年花咲く植物も 子を産み育てる動物も生きている それでも砂の降る街は まるでの全ての生命を嫌うように 今日も人々の足跡をゆっくり消し去ってゆく

紙切れ一枚

教室の角に立て掛けられた 淡い色使いの油絵 こんな紙切れ一枚で あなたが気になってしまう あなたの気持ちが詰まってる 不慣れな手つきで渡された手紙 こんな紙切れ一枚で あなたを好きになってしまう 見慣れぬ名前の終着駅が 大きく書かれた片道切符 こん…

君が望むなら臨んでみよう

『死にたい』と言う人がいる その人は死んでいない だから、僕にはやっぱり それが『死にたくなるほど苦しいけれど、それでも生きたい』に聞こえた。

か弱い信者に愛の手を

僕は神様が存在するかどうかなんて知らないけれどもし居たとして人の願いはその祈りの強さによって選ばれる事などなくどんな願いも気まぐれでしか叶えてはくれない事は知っています あなたが本当に神様を信じるなら罰や試練を与える神をも敬っているのでしょ…

腕のない男の話

生まれつき両腕がなかった僕は目が見えない女性と出会った。 僕はこの人を支えてあげたいと思った。でも。ある日小さな石につまづいて目の前で無惨に転ぶ彼女を、抱き止めてやる事も抱え起こしてやる事も出来なくて。ふと涙が止まらなくなったけれど、それを…

一日一善を心がける男

男「さて、そろそろ寝るか・・・あれ?僕は今日一日一善を忘れているじゃないか! これじゃあスッキリ眠りに付けないから街に出て一日一善してこよう。」・ ・ ・ 男「お、早速落し物の財布を発見したぞ。これを交番に届けて・・・よし、帰って寝る としよう…

正義の味方はお父さん

「お父さんお父さん!」「どうしたんだい?」「あのね、たけしくんがマッハマンなんて居ないって言うの。作り話だって言うの。」「う〜ん、そうかもしれないな。」「ええ!? じゃあ世界の平和は誰が守ってるの?」「ふむ、お父さんには世界の平和を守ってる…

弱者

いつからか弱者は無条件に保護の対象だ。 皆平等、そんな考えの基に生まれた思想だろうか。 私も保護の対象になりたい。 オレももっと楽をしたい。 俺も弱者だったら良いのに。 でもそれは弱者のフリでしかなくて、本当の弱者はきっと今日も苦しんでいる。 …

人殺し

貴方が私の息子を殺したのね!人殺しよ!人殺し人殺し!まぁ待ってくれ、お宅の息子さんが先に俺を殺そうとしてきたんだぜ?正当防衛だよ。 お前は僕の彼女も殺しただろ!人殺しだ!人殺し人殺し!しかしあれは事故だったんだよ。仕方なかった。 貴様は私の…

朝の5時に起きてみた

ある朝、僕が目覚める数分前に太陽が昇り、僕の為に光を注いでくれた。 僕を起す為にニワトリが鳴く。顔を洗おうと蛇口を捻ると驚くほど冷たい水が流れた。 その水は僕の頭をキンと冷やしてくれた。家を出るとまだ朝靄のかかった空気が肺を満たしてくれた。 …

現在の認識

人が物事を認識するのに僅かでも時間を要するのであれば 人が現在と認識しているものは過去なのだ

空想世界

子供の頃からゲームばっかりして馬鹿げた夢ばかりみてたから 大人になる頃には現実がぼやけて見えていた レンズ越しに見る世の中は現実より少し小さく映った

尖った金属片

いつの間にか欠けて尖った金属片 尖っていると言われ続けたそれは 何かにつけて刺さって傷つけた しかし針と呼ぶにはあまりに鈍角で 何一つ貫く事などできずにいた そうこうする内に削れて丸くなっていった 金属片は今も輝いている

心の体重

男「僕の体重は60kgだ」 女「私の体重は50kgよ」 男「僕は自分の体がふわふわと地面を捉らえないように感じるんだ」 女「私は自分の体がずっしり重くて脚が上がらないように感じるわ」 男「お互い何処へ行くにも大変な体のようだね」 女「そうね、今のままじ…

私が一番カッコワルイ・・・

ある公園の噴水の前には決まった時間、初老のオジサンが歌を歌っていた。 酷く音痴で、しかし誰かに届けと言わんばかりに優しい大声で歌っていた。 ご近所からは変人扱いされていたそのオジサンの歌を、私は密かに好きだった。ある日、派手目の友人とその公…

おいしそうな女

ある飲み屋でおいしそうな女が酒を飲んでいると、男が横へ座り話し掛けてきました。 男は言いました。 「アナタは美しい女性ですね。食べてしまいたい位だ。」 女は、また私を食べようという男が現れたわ・・・どうして私はこんな体に生まれたのかしら。と言…