物語−ホワイト

人間の神様

ある日、座布団の上に座って携帯を弄っていた僕の目の前に神様が現れた。それはこの世に存在する全ての生物を混ぜたような、なんとも現実味のない姿ながら絶対的な存在感を放っていたのだからもうこれは神様に間違いないと思ったのだ。そんなとんでもない状…

男と吠えない犬

ペットショップで吠えない犬ってのを見掛けたんだ。 なんてことない、品種改良でそういう犬を創った人達がいるらしい。どうやら血統書付きだがかなり格安なその犬を買って帰るとずっとどでかいくしゃみをしてやがる。 なるほど、どうやら静かな犬が欲しかっ…

アリとキリギリス

あるところにアリとキリギリスが住んでいましたアリ達は毎日せっせと働き、その横でキリギリスは働きもせず歌を歌います ある日キリギリスはニヤついた笑顔で一匹のアリに訊ねます「なぁアリさんや、君達はどうしてそんなに必死に働くんだい?」アリはその笑…

「ううん、何でもないよ」

そこは夢の中高校の教室で僕は友人と笑い合う 机に座って歌っている目の大きな男アコースティックギターを抱えているのが僕そしてそれを優しく見つめる女・・・僕が好きだった女の子 寝覚めは悪くなかったけれど机に座ってる男とは金銭のトラブルで友情を失…

朝起きてカーテンを開けると、しとしと神様が泣いている何かツライ事があったんだろうな、私がちゃんとしなくちゃな 飼ってる猫に餌をやり、グレーのスーツに袖を通しヒールを履いたら傘を持って玄関の戸をくぐる 今日は弱音を吐かないと誓いながら

ひねくれ者の友人

彼が言うには「仲の良い人には嫌われても良い」のだそうだ。 仲の良くない人はきっと自分の事をよく知らないだろう。よく知りもしないのに嫌われる、というのは気分が悪い。しかし自分の事を深く理解した上で嫌われるならそれは仕方ない。 これが彼の言い分…

世紀の大発明

ある所にお人好しの発明家、バーグという男がいました。バーグは長年の研究でついに「世界中の人がちょっとだけ幸せになる装置」の開発に成功しました。 馬鹿げた研究だと助手は1人もいなくなっていましたが、バーグはそんな事気にしません。なんせ自分の研…

私には大学から3年付き合っている彼氏がいた。 凄く優しい人だった。 ある時、私は彼にこう言った。「私、未だにあなたの事が理解できないわ」 すると彼は「僕は誰かに理解してもらった事なんてないよ」と返してきた。私はそれがショックで、数日後に別れ話…

励まし屋

はいいらっしゃい。っとどうしたんだい、眉間の渓谷に小さな村でもできるんじゃねぇかって顔してさ。 何々、つらい思い出がいつまでも頭ん中に残る。うんうん分かるよ。こんな店なんで同じような人が結構尋ねてくるもんでね、使い古した話なんだけどまぁ聞い…

ある物書きの葛藤

『おい、お前』「何だ?」『お前物書きなんだろ?』「ああ、一応な」『恋愛の話、犯罪の話、親子の話、未来の話、戦争の話、病気の話、道徳の話・・・随分色々と書いたな』「ああ、書いた」『もう書くんじゃねぇよ』「何故だ?」『軽率なんだよ、お前自身は…

朝の5時に起きてみた

ある朝、僕が目覚める数分前に太陽が昇り、僕の為に光を注いでくれた。 僕を起す為にニワトリが鳴く。顔を洗おうと蛇口を捻ると驚くほど冷たい水が流れた。 その水は僕の頭をキンと冷やしてくれた。家を出るとまだ朝靄のかかった空気が肺を満たしてくれた。 …

心の体重

男「僕の体重は60kgだ」 女「私の体重は50kgよ」 男「僕は自分の体がふわふわと地面を捉らえないように感じるんだ」 女「私は自分の体がずっしり重くて脚が上がらないように感じるわ」 男「お互い何処へ行くにも大変な体のようだね」 女「そうね、今のままじ…

汚い声のオヤジと青年

高速道路の高架下 汚いオヤジが唄うたう 酒と煙草で潰れたような 汚い声で唄うたう 人々が足早に通り過ぎていく中 一人の青年はオヤジの前に座った 暫らく耳を傾けて 涙を流してこう言った 「苦労を知ってるいい声だ、世の中を見てきたいい唄だ」 青年はオヤ…

Rusty ax

「ねぇ、旅人さん。」 「なんだい?」 「どうして貴方はそんなに大きな斧を持っているの?」 「どんな敵が来ても一撃で倒せるようにさ。」 「旅人さんは背が低いのに?」 「力があるから平気なんだ。」 「本当に?」 「あぁ、本当さ。」 「・・・。」 「・・…

ある人とある人の会話

「多分、僕は世界中の誰から嫌われても平気だ。」 「拒絶されるのがイヤじゃないの?」 「イヤだけど平気なんだ。」 「今、私がアナタの事を嫌いになっても平気なの?」 「イヤだけど・・・多分、平気だ。」 「そう、悲しい人なんだね。」 「そうだね、そう…