私が一番カッコワルイ・・・


ある公園の噴水の前には決まった時間、初老のオジサンが歌を歌っていた。
酷く音痴で、しかし誰かに届けと言わんばかりに優しい大声で歌っていた。
ご近所からは変人扱いされていたそのオジサンの歌を、私は密かに好きだった。

ある日、派手目の友人とその公園を通りかかった時、あのオジサンの歌声が聞こえてきた。
友人はオジサンに目をやり、「うわぁ〜、あんな事までしてそんなに目立ちたいのかなぁ?」と蔑んだ言葉を吐いた。
私は何故かカッとなって「アンタだって髪染めたり派手な化粧して人の気を引こうとしてるじゃん!」と、怒鳴ってしまった。
友人は、普段滅多に怒らない私が声をあげた事で一瞬ハッとしたような顔をして、バツが悪そうに「そういうアンタはどうなのよ・・・」と言い残して一人で公園を出て行った。

取り残された私は自分の言った事に酷く後悔し、また、恥ずかしくも情けなくもなった。
「私が一番カッコワルイ・・・」一人そう呟いて左手首を自分の体に抱き寄せた。


公園がある通りにはオジサンの歌が響いていた。