近道

僕が迷路を歩いていると

どこからともなく声がする

「近道ならこっちにあるよ」

それは小人だった頃の僕

手を引かれてついて行けば

それは10センチほど開いた穴

「今の僕にはもう通れないよ」

そう言うと僕はまた歩き出した


僕が迷路を歩いていると

どこからともなく声がする

「近道ならここにあるよ」

それは巨人になった僕

手を引かれてついて行けば

それは10メートルを越える壁

「今の僕ではまだ登れないよ」

そう言うと僕はまた歩き出した


僕が迷路を歩いていると

どこからか僕の声がする

「近道なんてどこにもないよ」

そこにいたのは今の僕

手を引かれて歩き出せば

そこは先の見えない路地

「           」

何も言わずに僕はまた歩き出した