物語−ブラック
「この瓶の中身を摂取したものは1週間程で死に至ります」ズキズキ痛む頭を押えながら財布の中を確認して溜め息をひとつ。 かなり使ったなぁ・・・ええと、飲み屋を出て、上司の愚痴と吐しゃ物をぶちまけながらタクシー乗り場へ向かって、ソファーの上に転が…
目が覚めたら出入口のない部屋にいたひとつ窓の代わりのように鏡があるそこには自分の顔と出入口のない部屋が映る出入口のない部屋で恐怖と狂気に晒されて鏡と窓との境界がわからなくなったそこに映る自分の顔と出入口のない部屋が外の世界としか見えなくな…
目を潰しても不幸が見えた鼓膜を破っても破滅が聞こえた舌を切っても死の味がしたそれでも私は_
私の思考や行動は度々「芸術家のようだ」と比喩されるしかし私は芸術家ではないし芸術家を目指している訳でもない 私の思考や行動は度々「芸術家のようだ」と比喩されるその一方で私のそれを「芸術だ」と言う人は1人として居ないそれが全てを物語っているで…
銃を手にして彼女は自分に敵などいなくなったと思いました。 そう、彼女は世界で一番強くて偉い人間になったのです。 彼女が自分に歯向かう者を殺し続けて1週間が経つ頃、彼女の下腹部を鈍い痛みが襲いました。 彼女は自分の子宮めがけて銃弾を撃ち込みまし…
「生きているのがツライんです」 じゃあ死ねば?「でも死ぬのは恐いんです」 それなら生き方を変えろよ「そんな事無理ですよ」 ワガママな奴だ、俺が殺してやるよ「やめてください」 お前みたいな奴嫌いなんだよ「やめてください」 ちょっと黙ってろ「やめて…
アナタは病気です。治療には苦痛を伴います。 治療しますか?治療しませんか? アナタはその問いに「苦痛は嫌です」と答えました。だからアナタは病気のままでヒトはアナタに優しくしません。 「治療する気になったらまたいらして下さい」医者はそういって手…
彼は半年ほど前から精神、および脳の病にかかっていた。 それは何とも奇怪なもので、自身が傷つけたものはそれが生物でなくとも血を流して見える、というものであった。 棚からグラスを落とせばガラスの破片と共に血が飛び散り、ジャガイモの皮を剥けば両手…
彼は大好物のコーンを食べるのを邪魔された。 だから彼はけして罪など犯していない。 彼はいつも獣の声を聞いているのだ。
不快な笑いが聞こえる。 笑い声の主を探して部屋を見渡せば鏡の中に下品な顔が見えた。 鏡を拳で叩き割ったが不快な笑いは消えない。 ふと拳を見ると鏡の破片が突き刺さり血が溢れ出ていた。 恐怖が彼を支配して笑い声は止まった。
唇が乾いていました。彼は水を塗りました。 彼は唇が乾く度に水を塗りました。 しかし唇は乾き続けます。 それは彼が血と金を啜り続けるからなのです。 彼は渇きの中で死にました。 彼は世界の事が嫌いで世界は彼の事が嫌いです。
女の子が座っている。 欠けたレンガに座っている。 女の子は笑っている。 狂ったように笑っている。 女の子は幸せではない。 かと言って不幸せでもない。 僕は彼女を不幸せだと思った。
綺麗な人が立っていた。 僕は「あ、綺麗な人が立ってる。」と思った。 綺麗な人は、ぼーっと一点を見つめていた。 僕は「一体何を見ているんだろう?」と思った。 綺麗な人に母親らしき人が駆け寄ってきた。 僕は「あぁ、あの人は知能障害者なのか。」と思っ…