世紀の大発明
ある所にお人好しの発明家、バーグという男がいました。
バーグは長年の研究でついに「世界中の人がちょっとだけ幸せになる装置」の開発に成功しました。
馬鹿げた研究だと助手は1人もいなくなっていましたが、バーグはそんな事気にしません。
なんせ自分の研究で世界中の人がちょっとだけ幸せにできるのですから。
もう研究費用だって貰えませんが、バーグはそんな事気にしません。
世界中の人がちょっとだけ幸せになるのを証明する事が出来ないのは最初から分かっていたのです。
しかしバーグは自分の研究に絶対の自信を持っていました。
バーグは意気揚揚と世界中の人がちょっとだけ幸せになる装置の電源を入れます。
世界中の人はちょっとだけ幸せになった事に気が付きません。
それほどにちょっとだけ、ちょっとだけ幸せになる装置なのです。
世界中の人はちょっとだけ幸せになった事に気付きませんが、バーグは幸せの真っ只中でした。
だって自分の研究で世界中の人が幸せなのですから。
しばらくしてバーグは研究所をたたむ事になりました。
研究費用が貰えなくなったので研究所を維持していけなくなったのです。
研究所にいれる最後の日、バーグは装置の電源を切りました。
その瞬間、世界中の人はちょっとだけ幸せじゃなくなったのですが、誰もそんな事には気が付きません。
バーグはちょっとだけ悲しそうな顔をすると研究所をあとにしました。
それから月日は流れ、バーグは天寿をまっとうしました。
使われなくなった研究所には、今でも世界中の人がちょっとだけ幸せになる装置が眠っているそうですが、その事を知る者は1人もいません。