敵の多い男
彼は物心ついた時から敵の多い男だった
彼は自分に敵が多い事を嘆いているようだった
誰しも彼の味方になる可能性を秘めているのだから
仮に彼に敵が多いとしてそれは彼の責任であるはずのだが
どうやら彼は自分の置かれた状況を悲観視する事しかできないらしい
しかし問題はそんな事ではないのである
周囲の人間に彼の事を敵視している者など一人もいないのだ
彼が自分の味方にならない人を敵視しているだけなのだ
そんな彼を周りの人は相手にするはずもなかったのだが
相手にされない事によって彼はますます周囲の人間を敵視した
彼は終始、自分の意見に同意して欲しいという素振りを見せていたが
私はどうにも彼の意見が正論だとは思えなかったので相手にしなかったのだ
どうやら次に会う時は私も敵視されているのだろう
彼はまた一人、敵を増やして帰っていったようである