親殺し

「なぁ、守衛さんよ」

「・・・死刑が決定した者は犬以下の身分だ。人間に話しかけるのは御法度だぞ?」

「そいじゃこれはオラの独り言だ気にしねぇでおくれ」

「ああ、独り言なら存分に喋べりゃ良いさ」

「オラのおっかぁはオラが子供の頃からずっと言ってただよ『もう死にてぇ、いっそ誰か殺してくれんか』ちゅうてな」

「お前それで自分の母親を殺したのか?」

「ああ、数えて丁度一千回目。一千回おっかぁが死にたいちゅうたら殺そうと決めとった」

「親殺しは人道に最も反する犯罪の一つだぞ?」

「そだな・・・改めただよ、おっかぁは出刃ぁ持ったオラを見て心底怯えとった」

「・・・そうか」

「なぁ、守衛さんよ」

「なんだ?」

「守衛さんの立場考えたらここから出せねえのは仕方ね、でも一つだけ頼みがあんだ」

「俺にだって慈悲の心はある、欲しいのは煙草か?酒か?」

「オラを殺してくれねぇかな?」

「それはできない相談だな」

「そだな、普通頼まれたって殺さねぇよな、はは・・」

「・・・そうだ、普通殺さない」

「なぁ・・・何で守衛さん泣いてんだ?」