草履泥棒
あるところに草履泥棒が居ました
草履泥棒はくる日もくる日も盗みを働き、多くの人を困らせました
ある日役人に捕まった草履泥棒はこう言いました
「俺は確かに泥棒だ、しかし銭を盗んだ事はねぇんだ」
役人は首を捻ってしばらく考え込み
「なるほど銭を盗めば即打ち首の所だが、草履ではそこまで罪も重くはあるまい」
そこで草履を盗まれた者を集め、拳骨を一発ずつやらせる事にしました
草履泥棒も拳骨で済むなら、と刑を受ける事にしました
いよいよ刑罰が行われる日、役所には百人もの人が並びました
草履泥棒はそれを見て驚きましたが、自分の罪を償う為に覚悟を決めます
拳骨を一発受け、拳骨を二発受け、
七十を越える頃には頭の形もすっかり変わってしまいました
そして痛みすら麻痺してきた頃にやっと百人目の拳骨が済みました
しかし拳骨は一発、もう一発と泥棒の頭に振り下ろされ続けます
草履泥棒は数も数えられなくなった朦朧とした頭で問います
「役人さん・・・俺に草履を盗まれた人は後どれくらい居るんだい?」
「刑が始まってからも次々に集まってな、ざっと最初に居た分の二十倍だ」